実績紹介Achievement Introduction

　本業務は老朽化による橋長20.8m木造複方杖橋のこおろぎ橋架替え設計を実施するものである。

　本橋は、渓谷や紅葉を眺めながら散策できる観光名所である。そのため、観光や住民生活への影響を最小限にしながら、短期間で効率的な現況調査を実施し、地域住民や温泉関係者、道路管理者の多様的な思い入れも反映しつつ、景観と環境に配慮した安全で高耐久な橋の設計・施工計画について、幅広い関係者間で綿密な合意形成を図った。

　現況調査では３次元レーザによる点群計測により効率的に構造形状と寸法を把握し、取得した点群データから３次元CADによるモデル化を行った。また3Dプリンタで現況模型を作成して関係者間のイメージ共有に活用することにより、早期の合意形成へと導くことができた。

　設計では歴史的な形状の復元に最大限配慮しながら、環境影響の少ない湿式防腐剤の塗布や主要部材への滞水防止形状に工夫するなどの耐久性向上策に加え、損傷しやすい床材や高欄部材は交換しやすい構造へ改良するなどの維持管理への配慮を行い、在来工法と近代技術の融合により、歴史ある木橋の長寿命化にも配慮した。また木橋としての安全性を担保するため、３次元骨組構造解析で耐荷性能を定量的に示した。さらに将来の維持管理を見据え、オリジナルの維持管理マニュアルを作成し、腐朽状況を把握するための暴露供試体を設置するなど、安全・安心・長寿命化に配慮した木製橋梁を復元完成することができた。